働き方が多様化し、 非正規雇用が増えている中で、 「格差社会」をめぐる議論が巻き起こっている。 若い世帯ではここ15年ほどで経済格差が広がり、 不平等が拡大していると感じる人が増えている。実際、義務教育の4人に1人が何らかの就学援助を受けており、 4割を超えた区も報告された(文部科学省調査)。高いお金を払っても塾に通って受験をめざしたり、 学校での授業を補完する子どもがいる一方で、 就学援助を受けなければ学校にも通えない子どもがいるという義務教育段階での教育環境の格差は大きな問題であり、 さらに将来、 格差の拡大や固定化が懸念される。 いまこそ公教育の充実を図り、 すべての子どもに教育の機会の平等が保障されなくてはならない。
7月末の東京都教育委員会 (都教委)は、都立中学や養護学校の教科書選定、部活動に関する規則の改正、「奉仕」のカリキュラム作成、 教員の職のあり方検討委員会答申、 食育推進計画など、 盛りだくさんの内容だった。 いずれも今後の教育の行方を左右する重要な課題ではあるが、 格差社会への解決に向けたものとは程遠く、むしろ新たな火種を蒔いたと考えられる。特に教員の職のあり方について「年功序列的な現在の処遇に対し、 職責・能力・業績をより的確に評価、処遇すべき」として、職の細分化を提案しているが、 今後大きな議論を呼ぶであろうことが想定される。
これまでの、憲法・教育基本法・子どもの権利条約などに反する 「日の丸・君が代」の押しつけはもとより、 主幹制度導入や学校経営支援センターの設置など、 都教委の管理の徹底ぶりは全国的にも突出している。 このような異常事態の一方で、 少人数学級の導入には消極的であり、学校現場では教職員の数が減少、校務分担などに支障をきたしている。 団塊世代の大量退職期を目前に、優れた教師の確保は急務であるが、 これほどの締めつけの中で東京に奉職しようという希望者はどれほどいるのだろうか。
公教育への信頼を回復するためには、 子どもや保護者、 地域の声を真摯に受け止め、 教職員の増員と、 その自主性を尊重することが必要である。 都教委の自覚が問われている。