都教委の国際感覚ゼロ・意味不明の見解

「ジェンダー・フリー」という用語にまで口出し!

 8月26日の東京都教育委員会定例会で、来春開校する中高一貫校に「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社の教科書を採択しました。扶桑社の教科書が採択されるかどうかが最大の焦点だったため、その行方を案じ、たった20枚の傍聴券を求めて173人の方が並んだそうです。多くの傍聴者が詰め掛けることは予想されたため、警備員の配置には怠りなかったものの、傍聴席を増やすことには思いが至らない教育庁の姿勢に改めて異常さを感じます。(ネットでも並びましたが、外れてしまい傍聴できず。)
 扶桑社の教科書採択は、2001年の都立盲・ろう・養護学校での採択に続く決定ですが、多くの市民の2万筆を越える意見や危惧の声を無視した決定でした。教科書選定に関する曖昧な判断基準と、教科書選定委員会への恣意的な諮問のあり方や、今後の国際社会での孤立化を招くような認識の欠如とともに、全国に及ぼす影響を考えると、大きな憂慮を抱かざるを得ません。新聞報道によれば、6人の委員がいるにもかかわらず、議論は計5分あまりで終わったそうです。「開かれた中での採択ができない」どう考えてもおかしいですね。来年は4年に1度の全国一斉採択の年にあたり、多くの抗議の声が上がっています。

 また、定例会では、男女平等教育に関する情報提供として、「ジェンダー・フリー」という用語の使用に関する見解と、都立学校長宛に「ジェンダー・フリー」にかかわる配慮事項を通知しました。
 都の見解では、最近の「ジェンダー・フリー」という用語をめぐる誤解や混乱の状況があるため、男女平等教育を推進する上で、今後は「ジェンダー・フリー」という用語は使用しないこととし、配慮事項として、①教科書での「ジェンダー・フリー」の用語にかんしては、都の見解を充分に踏まえ適切に指導を行うこと。②男女混合名簿については、「男らしさ」や「女らしさ」をすべて否定するような「ジェンダー・フリー」の考えに基づいた男女混合名簿の導入しようとし、学校において混乱を招いているので、誤った考え方としての「ジェンダー・フリー」に基づく男女混合名簿を作成することがあってはならない。という、何とも中途半端な、意味不明の通知です。
 憂慮される「ジェンダー・フリー」論があるなら、性差と社会的につくられた差別を意図的に混同させるジェンダー論を正し、ねじ曲げた「ジェンダー・フリー」の使用にかんする見解を示すべきでしょう。教育現場で、どのような誤解や混乱が起きているかの検証もせず、また、明確な名簿作成の基準も示さず、校長権限(名簿作成の権限は校長)を超え言及したことは、男女平等教育そのものを阻害する暴挙と考えます。
 都議会生活者ネットワークは都教育委員会の判断に対し、抗議の見解を出しました。