住みなれた地域で誰もが自分らしく暮らす

介護保険に必要なものを検証する

厚生労働省は介護保険制度の見直しで、財政難を理由に、自治体に1%の給付削減目標を指導するとともに、「要支援」と「要介護1」などの軽度の人に提供されていた訪問介護サービスを大きく再編し、新予防給付に転換しようとしています。中でも「家事援助」が高齢者の自立を阻害するとして、著しくサービスが制限されようとしていることは、大きな疑問です。高齢者にとって日常生活における心身の機能低下を支える少しの手助けこそ自立を促すものとなっているからです。
介護保険制度には本来、要介護状態の悪化の防止や予防のためのサービス提供が位置づけられています。問題はこの5年間、理念にもとづいた制度運用への検証が置き去りにされたこと、今になって財政難を理由に、本人の自己決定も制限するような改定では、誰のための見直しなのかといわざるをえません。
生活者ネットでは、地域で活動する市民グループとともに「介護保険検証のための基礎調査」に取り組みました。99年から5年間、同じ市民調査員が継続して同じ対象者を訪問し、聞き取りを行いました。利用者の視点で考えることを目的にしたこの分析結果からは、制度のあるべき姿が見えてきます。

地域福祉の充実を応援する都政に変える

介護予防というと機能訓練と考えがちですが、むしろ高齢者が潜在能力に気づき、生きがいにつなげるしくみが必要です。また、介護の不安をなくすために必要なサービスとしては、ショートステイや24時間対応のサービス、地域医療との連携、地域の宅老サービスや見守りネットワークの要望が多くよせられています。生活の一部を支えるサービスとして介護保険の充実が求められると同時に、地域には、本人と介護者を含めた生活全体を支えるしくみが期待されます。
多様なサービスとそれをコーディネートするケアマネジャーの力、これらを支える市民力と地域福祉の充実があってこそ、介護が必要になっても誰もが地域でその人らしく暮らすことができるのです。利用者の視点に立った制度改正とともに、地域福祉の充実に対する東京都の姿勢が大きく問われる今こそ、地域を応援する都政に転換することが必要です。