昨年、生活文化局が行った「霊園についてのアンケート調査」によると、回答者の41%は墓地を持っておらず、その6割が現在必要としていると答えています。都立霊園での散骨用墓地についても6割の人が容認しています。東京都は、都道府県単位で霊園事業を行う唯一の自治体ですが、8か所の都立霊園と4ヶ所の納骨堂、2ヶ所の葬儀所を運営しています。増大する墓地需要にこたえるため、現在、合葬式墓地の建設や遺骨が土に返るような新たな埋蔵施設のあり方を検討していますが、散骨については、市街地に立地する都立霊園では、環境への配慮など様々な課題があり、困難であると消極的です。以前、ヘリコプターで視察に行った折、都心を離れると、丘陵地や山のふもとを縫うように住宅地が開発され、住宅地からさらに頂上に向けて山肌が削られ、白く輝く墓地が延々と続く風景に、人と自然の共存の難しさを感じました。今後さらに、自然破壊の墓地建設が加速することが予想されます。葬送のあり方とともに、古くて新しい墓地問題に行政も真剣に向き合う時期がきているのではないでしょうか。
怖くないお墓の話
散骨を求める陳情から
最近、マンション紛争とともに、住宅地や、多摩地域での大規模な墓地建設に反対する運動が起きています。そんななか、3月、遺骨を直接地面に埋葬し土に返す方式の墓地や、海や山に散骨する自然葬を求める「東京都として散骨したい都民を支援する施策について」の陳情がありました。陳情内容は、都内死亡者数約9万人のうち、既存墓地に埋葬されるのは6万人で、残り3万人は新規の墓地購入が必要。しかし、墓地購入には、都内では、200万円から500万円、近隣でも150万円から250万円かかるため、購入できず、遺骨を自宅・アパートにおいている所帯が相当数あると推測されること。また、土地の高騰と墓地に対する住宅地からの反対は、勢い墓地を山に求め、しかも莫大な産業となったため、数百億円の利権を求めて、暴力団の抗争事件も起きている。そこで、墓地を必要としない葬送のあり方を行政としても真剣に検討し、都営霊園等で散骨の場を提供して欲しいという趣旨です。