都議会生活者ネットワークを代表し、本議会に提案された第64号議案、第115号議案、及び第131号議案に反対し、その他の議案には賛成の立場から、討論を行ないます。
まず、第64号議案・都立学校の授業料の値上げについては、都立高校へのエアコン設置を理由としていますが、ヒートアイランド化が著しい東京の学習環境を考えれば、当然のことながら冷房はもはや受益者負担というべきものではありません。むしろエアコン設置を契機に、温暖化などの環境問題に積極的に取り組むために、その学習に必要な機材として公費でまかなうべきであり、授業料に転化することには反対です。
第115号議案・八ッ場ダムダムの建設に関する基本計画の変更に関する意見については、知事としては2度目の増額につながりかねない変更であり、国の一方的な方針変更に唯々諾々と従うのでは、自治体の長としての政治判断を回避したものと考えざるを得ません。そもそも八ッ場ダムは計画が発表されて以来、半世紀を過ぎ、工期延長・事業費変更を重ねているにもかかわらず、いまだ本体工事着手に至っていません。この間、水需要は漏水防止や節水努力もあって当初予測を下回っており、平成27年の完成時には人口減少時代に突入して、水余り状態になることが想定されます。しかも八ッ場ダムを作る吾妻川上流には草津白根山があり、硫黄成分の流れ込みで酸性度が高い川として知られ、飲料水として最適とはいえません。現在多摩地域で飲んでいる上質な地下水を放棄し、河川水に切り替えていくことは、ダム計画を正当化することにつながります。東京都は八ッ場ダム建設の中止を国に求めるべきであり、今回の工期延長への同意に反対します。
第131号議案は、新銀行東京に対する400億円の追加出資の是非を問うもので、今回の予算特別委員会の大半の時間を費やして審議されました。
これまで知事は、知事の責任ある言葉として追加出資はしないと言明してきたにもかかわらず、突如として、400億円もの巨額の税の投入を提案したのは、明らかに都民への背信行為です。しかもなぜこのような事態に立ち至ったかの調査をする前に支出を決めるという本末転倒振りでした。銀行の経営状態や再建計画の詳細はいまだに示されないままです。とすれば議会は、議会の良心として、百条委員会を設置して、ここに至った責任を明らかにすべきでしたが、予算特別委員会での審議にとどまってしまいました。都政のチェック機関としては実に不十分であったと思います。参考人招致もなされておらず、銀行の実態は今なお闇の中としかいえません。知事自ら「この程度の審議では都民の理解を得るのは難しい」と認める今回の議会の審議には、多くの都民が納得していません。どのような付帯決議をつけたところでそれが何の保障にもならないことは、設立時の付帯決議が反故にされたことでも明らかです。
新銀行の提案者である知事が自身の責任を認めず、事業の失敗を自らが招いた経営陣に転化し、多額の税の再投入が議決された委員会終了後には「世論調査を気にしていたら政治なんてできない」と都民の声に耳を貸そうともしない神経には驚くばかりです。
当初出資の1000億円をわずか3年で毀損させたことを都民に謝罪することもなく、多摩地域の多くの市の年間予算にも匹敵する400億円を、納得のいく説明もないまま、新たに要求する金銭感覚と、税に対する認識の薄さは、都政を担うものとして全く不適切です。税金は使い道を明らかにできないような支出はすべきではありません。これは民主主義社会の自治体の最低限の約束事です。
生活者ネットワークは、新銀行への追加出資に反対し、石原知事の新銀行東京の失敗に関する責任の自覚と反省を強く求めるものです。
一方、平成20年度のその他の予算案については、「『10年後の東京』の実現に向けた取組を加速させるとともに、いかなる状況変化の下でも、その取組を支えうる持続可能な財政基盤を築き上げる予算」と位置づけていますが、三環状道路などの道路建設事業、オリンピック関連経費など、知事の関心の高い事業が幅を利かしています。しかし、これまで堅調に推移してきた都税収入は、原油高や円高、法人事業税の移譲などの影響で、19年度をピークに先行き不透明な状況になってきています。
新銀行東京やオリンピック招致など、石原知事の選挙公約実現のために、都民の貴重な税金をばら撒き続けることは、もはや都民の理解を得られるものではありません。
温暖化対策、低所得者対策、消費者行政の充実、未来ある子どもたちの教育など、都民の生活に根ざした待ったなしの課題が山積しています。
あらゆる場面で分権が求められている今、地域自治体との連携で、本当に必要な事業が、円滑に効果的に行なわれることを要望します。
なお、政務調査費の公開については、税金であることを考えれば公開が当たり前であり、全会派が取り組むことを前提に、あり方検討委員会を設置して議論を進めてきました。新たな使途基準が不十分であることは承知しておりますが、公開に向けての最大公約数としての基準と捉え、4月1日からの試行の中で見直していくことが必要です。今後も1円からの領収書添付に向けて、あり方検討委員会を継続し、都民のチェックに応えられる制度にしていくことが、議会の責務と考えます。
以上を持って、都議会生活者ネットワークの討論とします。